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- 竣工:
- 2025年3月
- 用途:
- 専用住宅
- 構造/規模:
- 木造2階建て
- 所在地:
- 宮城県仙台市青葉区
- 撮影:
- 中山保寛
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新建築住宅特集2025.05




















「敷地環境と住まいを取り持つ建築化された外部」
敷地は、仙台市中心部と北部のベッドタウンを結ぶ幹線道路と、穏やかな水流の河川敷という全く状況の異なる環境に挟まれた位置にある。河川敷といっても散歩する人が行き交うようなものではなく、河川管理者のメンテナンススペースとしての空地であり、一見すると敷地境界が曖昧で、そこはまるで敷地の一部のようである。
クライアントは、敷地隣で、フレームからオイルタンクに至るエンジン以外のほぼ全てのパーツをオーダーメイドでビルドアップするバイク工房を営み、自身の作品であるバイクや趣味の車を格納し、友人や顧客が集える空間と、同一平面で生活が完結する平家のような住まいを求めていた。
そこで、地面を開放し、隅々まで余すことなく使える外部空間の上に家族専有の空間を持ち上げた、高床式住居のイメージから設計を進めた。
方杖柱と水平力を負担するコアによって高床式住居を支えるヤジロベエのような架構とすることで、基礎面積を極力小さくし経済性に配慮すると共に、バイクや車の取り回しに制約が少ないピロティを構成した。方杖柱とコアは、幹線道路と河川敷に緩やかな境界面を生じさせ、幹線道路側は、顧客がバイクで乗り付けることができる道路との親和性の高い空間、河川敷側は、河川に向かって開かれたアウトドアリビングとなる。
高床の居住空間は、敷地との関係を完全に断ち切るのではなく、敷地環境を手がかりに各室を配置した。幹線道路側に水回り、ウォークインクローゼット、寝室といった平面的に閉じた空間を配置し、幹線道路の喧騒から距離をとった河川敷側は、連続する水平窓と腰壁により開放性と落ち着きのあるリビングとした。小屋組と中央に配置したハイサイドライトは、幹線道路側と河川敷側双方の空間を統合し、明快な平面構成に揺らぎを与えている。
高床によって建築化された外部は、幹線道路と河川敷の狭間にあるこの敷地ならではの水平方向の「動」と「静」、垂直方向の「公」と「私」といった敷地環境とそこでの暮らしを取り持つ閾となり、そこには、風が抜け、「もの」や「こと」が敷地境界線を解き、伸びやかな風景が広がる。