• 竣工:
    2021年3月
    用途:
    専用住宅
    構造/規模:
    木造在来工法/地上2階
    所在地:
    仙台市青葉区
    撮影:
    中山保寛
  • 日本建築学会東北支部 東北建築賞

    新建築住宅特集2022.07号掲載

路地を引き込み 天空光を得る

敷地は、せんだいメディアテークから北に500m程の都市生活に事欠かない利便性の良い場所に位置する。周囲の開発から取り残されたかのように、幅員4m未満の砂利敷きの狭隘道路に沿って8件の住宅が密集する一角に敷地はある。軽自動車すら進入することが出来ない狭隘道路は、8件の住宅の中庭のように庭木が越境し、道路とは思えない親密さがある。対して、この8件の住宅が密集する小集落の南には5階建ての病院が建ち、冬季の採光を獲得するためには、高さ13mの位置に窓を設けることになり、8件の小集落のスケールから逸脱したものとなる。
クライアントは、車を手放し、カーシェアを利用し、太陽の光を浴びたいときは近くの公園に散歩をする。都市空間に住まうことを求めこの敷地を購入した。
住まいは、手を伸ばしても得る事が出来ない採光を求めるのではなく、大気に拡散する天空光を得ることとし、小集落の中庭を延長するように幅2mのFRP折板で覆われた路地を引き込んだ。路地は、玄関であり、リビングであり、新型コロナウィルス感染拡大を機に在宅ワークにシフトした主人の書斎であり、1階から2階の個室への移動空間である。常時開放している防火シャッターを設けることで、防火構造を成し、その外側に木製の玄関引戸を設け、中庭と路地をシームレスに接続している。木造住宅は内部仕上げから外部仕上げまで気密層、断熱層、防水層、空気層と機能を持ったいくつもの層によって構成されているが、この路地は、防水層の外にある空気層を肥大化させたものであり、断熱が施されていない半屋外空間である。そのため、透湿防水シートに通気胴縁のエアホールを表にして、12mmの隙間をとって仕上げとしている。住まい手によって通気胴縁の隙間に12mmの棚板を差し込み、植物や置物で溢れ、天空光で満たされた路地空間は、クライアントの都市生活をさらに謳歌するための空間となる。

設計日誌