• 竣工:
    2018年6月
    用途:
    店舗併用住宅
    構造/規模:
    木造在来工法/地上2階建て
    所在地:
    仙台市泉区
    撮影:
    佐々木育弥
  • デザインリノベーション2019掲載

8年前に中古住宅を購入し、住まいの一部を改装し天然酵母パンを製造販売していたクライアントからの要望は、温熱環境の改善と、これまで同一空間にあった店舗と玄関を切り離し、住まいと店舗の独立性と繋がりを再構成してほしいという、「性能」と「機能」のリノベーションだった。対象地は、冬季、泉ヶ岳から吹き降ろす風、いわゆる "泉おろし"が通り抜ける場所にあり、仙台市内の住宅地において最も寒さが厳しい住宅地といっても過言ではない。そこで、仙台市内でコスト面において無理なく、快適に生活できる性能を確保する手法として、内窓の設置、グラスウールによる充填断熱+内部付加断熱を施した。店舗空間を道路に沿うように北側に配置し、南に面する庭に向かって開けた勝手口のような玄関を設け、それらをL字の土間空間で結ぶことで、住まいと店舗の独立性を生みつつ、庭からの薪の搬入、パン製作と家事の機能的にシームレスな関係を構築している。昨今のリノベーションという言葉とそこから生まれる建築空間は、ある種の様式のように躯体に化粧を施し、舞台装置のようにインフィルの表層を作り替えているという印象を受けるが、寺岡の家では、そういった表層を作り替えるものとは一線を画し、既存建築の躯体内部をデザインすることにより「性能」を高め、クライアントが求める住まいと店舗の繋がりによる住まいの「機能」を再構築することにのみ注力することにより生まれる、化粧をそぎ落とした素の美を求めている。