• 竣工:
    2020年11月
    用途:
    専用住宅
    構造/規模:
    木造在来工法/地上2階
    所在地:
    仙台市青葉区
    撮影:
    中山保寛

1000万円未満の宅地を不動産情報サイトに掲載されている限られた情報を頼りにgoogleマップで探し出し、現地に足を運び価格設定の要因を探るという一風変わった趣味のなかで、この敷地と出会った。
敷地は1960年代に起伏ある斜面を造成した住宅地にある。所有者の高齢化と仙台市中心部からの利便性により、あちらこちらで敷地を細分化し再分譲が進み、不動産的観点における健全な新陳代謝が進む地域にありながら、それから取り残されるかのように間口6.5m奥行16m、道路から約2m下がった敷地に朽ち果てた古家が建っていた。
オーナーの安くても売却したいという思惑による軽自動車1台程度の価格設定は、その思惑とは裏腹に破格の安値と朽ち果てた古家とが相まって何か建築不可能な事情があると思慮され、不動産市場から取り残された所謂デッドストック不動産である。近隣の敷地に比べ極端に狭い間口と道路との高低差によりこれまで幾多のハウスメーカーや設計者が設計することに踏み切れなかったデッドストック不動産は、極小でありながら南に向かってひな壇状に造成されているため、道路レベルから眺望がよい。この環境を積極的に活かした上で、ローコストでありながら、快適性と冷暖房費が軽減できる断熱性能(UA値0.4W/(㎡・K)、C値0.5㎝2/㎡)を担保した、経済性と快適性を併せ持つ、4人家族の住まいが求められた。
敷地の間口一杯に工事中の施工ヤードとなる車1台分の鉄骨造の駐車架台を設け、さらに用途地域による壁面後退1mセットバックさせた残地から2間×6間のフットプリントは自動的に決定した。12坪の限られたフットプリントに加え、厳しい高度斜線内で2人の子供の大学進学までの間、家族4人が住む為に2層+αの最大限の断面を確保し、子どもの成長に合わせて古民家のように流動的に家族が使用する場所を更新する住まいを目指した。流通材・工業製品の規格寸法から施工性の良い2層+αの断面寸法を決定した。1階は1間グリッドの構造フレーム内に、寝室、衣装部屋、ユーティリティを、耐力壁を適宜配置しながら計画し、2階は、2間グリッドの構造フレームに、梁間2間高さ3,640mmのV字の筋交を配置することで、リビング、ダイニング、キッチンを緩やかに分節する主室とした。V字の筋交は、林の中を分け入るような奥行をもたらし、木々が折り重なるように、筋交が近景である隣地の開口部を適度に遮りながら、南の眺望をめいっぱい取り込むリビングを獲得した。1間グリッドの柱や高さ3,640mmの筋交いは、家族の成長に合わせ空間を更新する手がかりとなり、生活に寄り添う存在となる。
狭い間口に対応する構造が生活空間に奥行と可変性をもたらし、狭小でありながら、家族の成長に対応して更新していく懐の深い住まいを実現した。

設計日誌