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- 竣工:
- 2019年11月
- 用途:
- 専用住宅
- 構造/規模:
- 木造在来工法/地上2階建て
- 所在地:
- 仙台市泉区
- 撮影:
- 中山保寛
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GOOD DESIGN AWARD 2020 受賞
新建築住宅特集2020年4月号 掲載
敷地は宮城県仙台市の中心部から車で20分ほどのベットタウンの外縁に位置し、西側隣地境界には高さ7mの巨大な擁壁の眼下に緑豊かな木々が生い茂り、さらにその先には雄大な奥羽山脈を望む開けた眺望が広がっている。敷地の履歴を調査すると、数年前まで宅地どころか平らな地面すらない木々に覆われた斜面であった。巨大な擁壁によって宅地造成された当該敷地の地中には、敷地西端から5mの位置まで擁壁底盤が潜り込み、敷地の1/3以上が、数年前までこの地に存在しなかった土壌で覆われていることが判った。目の前に存在する167㎡の平坦な敷地は、まるで宅地市場が自然に抗い、築造された擁壁によって作り出された白昼夢のようである。この西に開けた好立地と擁壁底盤による建築範囲の制限という悪条件の間で、南光台東の家の形態は導き出されている。擁壁の底盤を避け支持地盤まで杭を貫入させることができる範囲に断熱、気密が施された主空間を配置し、斜め柱と吊り柱によって擁壁底盤上部の不安定な地盤に対して全く荷重を伝達せずに大きく跳ね出した半屋外空間を設けた。ポリカーボネイトの建具で覆った半屋外空間は、四季を通して生活領域を拡張するアタッチメント空間である。巨大擁壁によってつくられた167㎡のバーチャルな敷地と、擁壁底盤までの敷地を除く100㎡のリアルな敷地の間に生まれる半透明の揺らぎのある空間は、リアルを拡張し、さらにバーチャルを超える西側の環境に向かって身体的に解き放たれた豊かさを獲得する。この巨大な擁壁の上に建つ小さな住宅の設計から、宅地市場の深い欲望を背景につくられた宅地に対し過信することへの警鐘と、そこから生まれるここにしかない建築物のあり方を示している。