• 竣工:
    2025年10月
    用途:
    専用住宅
    構造/規模:
    木造2階建て
    所在地:
    仙台市青葉区
    撮影:
    中山保寛

まちと静かに交流する構え

敷地は仙台市北部の寺町に位置し、微かに傾斜した道路に面している。アスファルト舗装の道路から未舗装の法面を介して、1.3〜1.8mほど下がった位置に平場が広がる。一見すると舗装の端が道路境界で、いつ誰かが植えたのか、はたまた種子が飛来し根を張ったのか来歴不明な草木が生い茂る法面は、敷地の一部かと錯覚する。しかし実際には、法面の下端までが公共の道路であった。
こうした境界の不確かさは、往々にしてまちの余白として見過ごされるが、その余白を伸びやかな暮らしと風景の構築の手がかりととらえたい。この住宅では、まちとの関係性を再構築する起点として、この法面を積極的に読み替えることを試みた。道路に属する法面の維持管理をただ行政に委ねるのではなく、庭を整えるように草木を手入れし、受け入れる。それは、この地に居を構える者として風景を享受する態度であり、まちへのささやかなギフトとなる。
この敷地は、道路から引きを取り、さらに高低差ゆえに駐車場を伴う住まいを建てるには不都合が多い。それに対し、独立性を保ちながらも、まちと静かに交流する構えを目指した。そこで、法面を庭と見立て、道路レベルから直接2階の玄関へと伸びる駐車場とアプローチを兼ねた鉄骨造の桟橋を設けた。桟橋は、もう一つの地面となり、水平に展開していたまち(公)と敷地(私)の関係性が立体的に層を成し、コンパクトな敷地の輪郭を超えた奥行きを生み出す。桟橋は道路から玄関へ向かって上昇し、桟橋に面した腰壁がプライバシーを調整して奥へ進むに従い生活の気配が濃くなっていき、桟橋の下は、土間を介して内部とつながるテラスとなる。道路の一部であったはずの法面は、車の軌跡から導き出された桟橋の隅切りによって建築に取り込まれ、まちと住まいを媒介する領域として再編される。そこには、街路樹の根元に誰かが植えた草花や、沿道に置かれたプランターのように、まちに彩りを添える小さな介入が生まれる。それらは法的な境界を越えて能動的にまちに参加する当事者としての実践であり、公共性と私性、道路と庭、その境界を横断する多層的な構成を通じて、この住宅は、単なる住まいを超え、まちの風景と社会的文脈に関わり続ける。

設計日誌