-
- 竣工:
- 2025年9月予定
- 用途:
- 専用住宅
- 構造/規模:
- 木造2階建て
- 所在地:
- 仙台市青葉区
小さな風景への介入、まちへのギフト
敷地は、仙台市北部の寺町に位置し、微かに傾斜した道路に接道する。アスファルト舗装の道路面から未舗装の法面によって1.3〜1.8m程下がった位置に平場がある。一見するとアスファルト舗装の端が道路境界で、雑草が生い茂る法面は計画敷地内かと思いきや、実は、法面下端までが道路であった。
街路樹の根元に明らかに誰かが勝手に植えたであろう草花や、通りを彩る敷地の外に置かれたブランター、バス停の脇の歩道に置かれたベンチは、厳密にいうと非合法の風景であるが、市民による小さな風景への介入といえるだろう。
敷地境界線の外側の法面は、あくまでも道路であるが、それを受け入れて毎年、納税者としてのスタンスで行政に除草管理を委ねるよりも、庭を整えるように景観整備に積極的に関わることが、この地に居を構え、この環境を謳歌することにつながり、ひいてはまちへのギフトになるのではないだろうか。
否応なしに道路から引きを取り、さらに高低差があることで、駐車場を伴う住まいを建てるにはやや不都合な状況において、小さな風景に介入するような住まいの建ち方を目指した。
そこで、雑草が生い茂っていた法面部分を庭と見立て、道路から引きを取った配置とし、前面道路に直交した駐車場を兼ねた鉄骨造のブリッジから2階の玄関へアクセスする構成としている。
植栽がバッファーとなり、1階のライブラリーはもとより、2階のリビングからも季節によって移ろう庭の様子を楽しみつつ、まちの風景を構成する道路となる。
鉄骨造のブリッジは、道路面から2階の玄関レベルに向かって僅かに上昇し、リビングに面する腰壁は、プライバシーの度合いを測る定規となり、奥に行くに従い住まいとの接続を強める。そして、駐車場の下を、エキスパンドメタル越しに陽光が降り注ぐプライベート性の高い外部空間とすることで、いわゆる「まちに介入する」という一方的な向かい方にならないようにしている。
行政にまちの管理を押し付けるのではなく、かといって過剰にコミットするでもなく、無理なく能動的に小さな風景へ介入すること。この細やかな創造行為が今後どのように展開可能か確信犯的に企ててゆく。